不明熱 丁寧な診察 重要
コラム
これまで一度も熱を出したことがない人はいないでしょう。発熱はだれでも経験します。
多くは「かぜ症候群」と呼ばれる感染症で、数日でよくなります
しかし、高熱が続き、医療機関で診てもらっても原因がわからず、困っている患者さんがおられます。
とりわけ、三八度を超える熱が三週間以上続き、一週間以上医療機関で調べても原因が分からないという場合を、不明熱といいます。
この不明熱が患者さんを苦しめ、私たち医師を悩ませることがあります。
不明熱といっても、必ず原因があります。一通りの検査は済んでいるので、まれな病気を想定して検査を進めます。
そしてその発熱のヒントは、患者さんから得られます。
まず全身の症状を詳しく聞き、診察します。さらに詳しく問診します。
これまでどんな病気にかかったか、最近海外へ行ったか、職業は何か、ペットを飼っているか、普段から服用している薬・漢方薬はあるか、薬以外に健康食品などは使用しているか、といった生活に関する情報を細かく聞きます。
熱が出る前に東南アジアへ旅行に行っていたことから、マラリアと診断できたことがあります。
結核菌が全身に及ぶ粟粒結核と診断される例もあります。
感染症と診断される場合が多いのですが、がんが原因の場合もあります。
成人スチル病といったまれな膠原病の場合もあります。
意外なところでは、薬や健康食品を中止したら熱が下がり、薬剤が原因の発熱だったという場合もあります。
このように、不明熱の原因は、感染症、がん、膠原病、薬剤によるものと診断される事が多いですが、それでも20%前後は原因不明のまま終わります。
判断がつかない場合は最初に戻って、診察、問診、検査を繰り返し、粘り強く診断していく必要があります。
最新の医療機器や検査があっても、最終的には丁寧な診察、問診が最も重要であるという医療の原点を私たちに教えてくれる病気といえるでしょう。